こんにちは、吉崎です。
6日、武田薬品工業が移転価格税制に基づいて2006年に受けた追徴課税処分について、申告漏れとされた1223億円のうち約8割にあたる977億円が取り消され、約571億円の還付が決定したというニュースがありました。
この「移転価格税制」による申告漏れ処分は武田薬品工業だけではなく、ホンダ1400億(追徴税額800億円)、ソニー744億(279億)、京セラ243億(127億)、TDK213億(120億)、マツダ181億(76億)などいずれも大企業に巨額の追徴課税がされて来ました。
「移転価格税制」とは、国内外の親子会社間での取引は、第三者間の取引よりも取引価格の操作がしやすいことから、価格の設定によっては税率の低い国に利益を多く移転させ、税率の高い日本での納税を減らすことが可能なので、通常の取引価格(=独立企業間価格、と言います)に引き直して課税しますよ、というものです。
日本の税率は世界でもトップクラスで、大企業は海外に生産・販売拠点を置くなどしてタックスコストを抑える経営自助努力をしてきたわけですが、この「移転価格税制」に捕まってしまうと意味がなくなってしまう上、「二重課税」の問題も生じます。
【具体例】
例えば日本(税率40%)のA社がX国(税率20%)に海外子会社B社を設立したとします。取引の流れはB社が第三者であるC社から商品を仕入れ、A社に輸出し(C社→B社→A社)、A社が販売すると仮定します。
この場合の金額が、C社→B社の仕入価格100、B社→A社への販売価格200、A社の販売価格300だとすると、B社の利益は100(税金100×20%=20)、A社の利益も100(税金100×40%=40)、A社とB社を合わせたグループ合計の利益は200(税金60)です。
ところが同じ取引でもB社→A社への販売価格を300とするとどうなるでしょう。
B社は100で仕入れて300で販売するため利益は200(税金40)、A社は300で仕入れて300で販売するため利益がゼロ(税金ゼロ)で、グループ合計の利益は200のままですが、、利益がX国に存在するB社だけに移転しているため、X国への納税のみで日本は課税のしようがなくなってしまいます。
そこで登場するのが「移転価格税制」。B社→A社への販売価格は300ではなく200が妥当であると日本の課税庁が判断した場合には、B社は利益200としてX国で40を納めたまま、A社の利益は100なので、日本で40を納めなさい、と言われてしまうのです。この考え方だとグループ合計利益が300となっていますよね。本来200であるのに、100の部分についてX国と日本と、双方から課税されてしまうのです。これが「二重課税」となるということです。
二重課税の状態を解消するには
1.国内救済手段に訴える(異議申し立て→審査請求→訴訟)
2.租税条約に基づく相互協議を申し立てる(国対国の話し合い)
3.1・2の両方を申し立てる
など納税者側の打つ手はありますが、いずれも長い時間と高いコストがかかります。
武田薬品工業では2006年6月に追徴課税され、2011年11月に米国との相互協議が合意に至らず終了したため、国内での異議申し立て手続きを再開したところ、この度国側が還付することとし負けを認めたわけです。
この移転価格税制、ニュースで取り沙汰されるのは大企業の事例ばかりですが、近年は中小企業の海外進出も進んでおり、他人ごとではない日が近づいていると考えられます。資本関係のあるグループ会社で国外取引が発生する場合には事前の価格設定に注意が必要!ということだけでも頭に入れておくとよいでしょう。
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